ひとりべや

大学生のつれづれなる日記です

あの夏と僕らについて『ピンポン THE ANIMATION』

今年も夏が近づいてきた。

栗の木の匂い、うだるような日差し、目に痛い青空。
そして私はこの時期になる度、『ピンポン』が見たくなる。

 

初めてピンポンを見た年から、なんとなく一年に一回くらいはまた見返して、かれこれもう4〜5回は見ているような気がする。
時々思い出したようにスマイルの鼻歌を口ずさむ。
何が私の琴線に触れているのか、少し冷静に考えてみる。

 

絵柄は好みが分かれそうな感じだ。何せ原作が松本大洋氏だから(?)。
ただ私は性根がひねくれているせいか、好みが分かれそうな絵柄が好みな傾向にある。

 

ストーリーは、平たく言えば卓球の話。ただ、本質的には『才能とヒーローの話』だと私は思う。
表向きは卓球の話だが、別に卓球に焦点をあてているわけではない。
スポーツアニメなら一試合を2〜3話使って、現実なら1秒のプレーを10秒くらい使って描いたりするものだが、ピンポンではサラッと描かれる。
まあサラッと、とは言っても表現の仕方がとても鮮やかでカッチョいいんだけども。

 

そう、このアニメはめちゃくちゃカッチョいいのだ。
「『ペコさん』、そう呼べ」
「愛してるぜ」
「ピンチの時にはオイラを呼びな!!
心の中で三回唱えろ!!
ヒーロー見参、ヒーロー見参、ヒーロー見参
そうすりゃオイラがやって来る」
「ホントに好きなら、強引にギュッと抱き締めてキスしてやりゃあいいんだよ」
「血は鉄の味がする」

 

ロックだ。とてもロックだ。
脳天を突き抜ける勢いでカッコいい。まさに爽快。
叫び出したいくらい気持ちいい。
普通、スポーツがテーマになると勝ち負けに目が行きがちだ。友情、努力、勝利。
しっとりした感動と、あの日見た夕陽に向かって駆け出す少年達。
アニメでは汗が光り、瞳は透き通って絵柄からは制汗剤の匂いがする。

 

『ピンポン』はそんな事ない。
ただひたすらにテンポ良く、まるで音楽のようにピンポン玉が飛んでいくのだ。
極彩色の湘南藤沢を、歪な形の少年達が全力疾走で駆ける夏。
まぶしいなあ、吐き出すくらいまぶしい。
指の間から零れ落ちるラムネの冷たさ、ベタつく海風、こめかみを這う汗の不快感。
灰色の体育館の階段はところどころひび割れて、何かよく分からないシミがついている。
プラスチックのチープな客席、生臭い冷房、血が引いてスッとする手足の感覚。
夏の魔力をここまでリズミカルに魅せてくるものだから、やっぱり超きもちいい。

 

キャラクターの中で誰を一番応援したいかと言われると、私はチャイナこと孔文革(コン・ウェンガ)を推す。
コームで髪をキュッと整えるところがカッコいいのだ。
卓球の国から日本のレベルの低い高校に飛ばされて、初めは辟易していた彼が、最後にはチームメイト達とワンタンを作ってカラオケに行くまで心を軽くするところがホッとする。
ちょっとニヒルで苦労人のいいヤツなんですよ。
私はまだ原作版を読んだことがないので、そこら辺も比べてみないといけないな。

 

絶対に負けない無敵のヒーロー。
彼は対峙する敵が強いほどニヤリと笑って、最後にはかならず勝ってしまう。
その力は圧倒的で、全てを征服してしまう。
そんなんだから、ヒーローと夏は似ているのかもしれないと思った。
だから私はヒーローと夏が好きなんだろう。

今年もまた夏がやってくる。
だから私はピンポンを見る。

 

 

暑が夏いぜ

 

http://www.pingpong-anime.tv/